Nature ハイライト

物理:怪しい電場の正体を解明

Nature 429, 6994

どんな研究所においても、遠心分離機、すなわち回転を利用して質量が異なる物質の混合物を分離する装置がなくては設備が十分とはいえない。遠心分離を使った古典的な実験例の1つがDNA断片の分離であり、ワトソン-クリックのDNA複製モデルはこれによって確認された。しかし、この方法には根本に不可解な点がある。つまり、種々の物質の遠心沈降を妨げる電場が存在すると、沈降する物質が実際よりも「軽く」見えてしまうのだ。 遠心分離は、混合物中の物質があたかも非常に多くの微小なボールベアリングであるかのように互いに干渉しないバラバラの粒子の形で存在するという仮定に基づいている。しかし実際の状況はもっと複雑であり、多くの分子が溶液中で相互作用している。このことは特にコロイドの場合に当てはまり、コロイド粒子は水や他のコロイド粒子とまだ完全には理解されていない複雑な形で相互作用している。このような相互作用は重力と拮抗して沈降を妨害するため、粒子は実際よりも軽いかのような挙動をみせる。 しかし、濃度が低い場合には、このような相互作用は質量の推定にごくわずかな影響しか及ぼさないと考えられている。今回、A RasaとA P Philipseはこの考えに反論して、帯電したシリカ球の遠心分離に関する実験を行い、非常に希薄な溶液中であっても沈降プロファイルを大幅にゆがめる電場が存在すると報告している。この電場は、実に簡単に説明できることが分かった。基本的には、溶液中の沈降コロイドの電荷とそれより軽い対イオンの電荷との間の単純な(しかし長い間見過ごされてきた)バランスの問題だというのだ。

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