Nature ハイライト 進化:潜在的変異で事態に備える 2011年6月2日 Nature 474, 7349 突然変異の中には潜在的変異(cryptic mutation)と呼ばれるものがあり、これらは、他の変異や環境変化があわせて起こらないかぎり、生物の表現型に観察可能な変化をもたらさない。本来は潜在的だった変動が、このような新しい条件の下では有利に働くことがあり、潜在的変動は進化的適応、つまり進化可能性を促進する可能性があると考えられてきた。しかし、自然界のゲノムと環境はどちらも複雑なため、この説は実験によって厳密に実証されてはいない。今回A Wagnerたちは、単一RNA酵素の触媒活性というin vitroでの単純化した系を使った研究によって、潜在的変動をより多く蓄積した集団のほうが、変動の蓄積の少ない競合集団に比べて新しい化学的環境に迅速に適応することを実証した。このような「先行適応機構」の存在は、動植物の育種だけでなく、複雑な形質がかかわるヒトの病気にも重要な意味を持つだろう。 2011年6月2日号の Nature ハイライト 構造生物学:病原性大腸菌の線毛構造 工学:グラフェン系フォトニックチップ 地球:白紙に戻ったスノーボールアースの出口 地球:氷の下のフィヨルド 考古:アウストラロピテクス類の移動を示す歯の記録 生態:地底に棲む線虫類 古生態:オポッサムの社会史 進化:潜在的変異で事態に備える 神経:初期の神経発達 目次へ戻る