Nature ハイライト

物性:有機分子にもあった強誘電性

Nature 463, 7282

強誘電性化合物は、実用的なさまざまな特性を備えている。例えば、電場での極性反転、温度に対する感受性、機械的応力の電気への変換能などである。強誘電性は、概して有機化合物では珍しく、ほとんどが弱いと考えられている。しかし今回、堀内佐智雄(産業技術総合研究所)たちは、黒色染料の成分であるクロコン酸の有機結晶で、室温を超える温度で比較的高い分極を示す強誘電性を発見したことを報告している。このような特性は、この単純な分子の結晶で容易にみられるわけではないが、適度の電場を印加して分子トポロジー的なケト-エノール変換を誘発すると出現する。この発見によって、有機強誘電体がこれまで考えられていたよりもずっと多く存在するかもしれないという期待が高まりそうだ。

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