Nature ハイライト

進化:血のつながりは運命しだい

Nature 431, 7008

一説によれば、我々現生人類はすべて、今から10万年ほど前にアフリカをあとにしたヒト集団の子孫である。しかし、イングランドの人々がみなヘンリー3世のような歴史上の人物の子孫だといった類の言い伝えもよくある。ではいったいどちらが正しいのだろうか。実際には答えは「どちらもあり」らしい。遺伝解析から得られる祖先(ancestry)と、系図(genealogy)とは同じものではないと認識すれば、現在生きているすべての人が、意外なほど最近の時代に生きていたごく小規模なヒト集団の子孫だと簡単にわかってくるのだ。 この説の数式化に伴う問題は、人々が常に均質な集団として暮らしていて自分の配偶相手を集団全体から自由に選べたとする、現実味のない仮定条件である。そこで移動や分離を考慮に入れれば、我々の一番最近の共通祖先が生きていた時代までの時間は延びるはずだが、D L T Rohdeたちが今回報告したところによれば実際はそうではないらしい。彼らが地理的に現実味をもたせたシミュレーションをしたところ、わずか2,000〜3,000年前に生きていた1人が現在の地球上にいる全人類の祖先だったという結果になった。そして、そのさらに2,000〜3,000年前になれば、当時の世界の誰もが、現在生きている人々全員の祖先か、あるいは誰の祖先でもないかのどちらかになるのだという。これらの研究結果は、祖先のネットワーク構造や人類の血縁関係についての見方を根底から変えてしまいかねない可能性を秘めている。

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