Nature ハイライト

地球:氷床が溶けたとき

Nature 458, 7236

地球の軌道変動は、寒冷な氷期から温暖な間氷期への気候変動に影響を及ぼすことが知られている。巨大な西南極氷床がこのような変動にどのように応答するかはよくわかっていないが、この氷床が崩壊すると海水面が約5メートル上昇する可能性があるので、大きな関心が寄せられている。ANDRILL掘削計画の一部として、Naishたちはロス棚氷の下から得られたAND-1B海洋堆積コアを分析し、大気中のCO2濃度が現在と同じか、少し高かった鮮新世前期(300万〜500万年前)に、氷床が周期的に崩壊していた証拠を発見した。崩壊のパターンは、地球の自転軸の傾きにみられる約4万年周期の変動の影響の存在を示唆している(Letter p.322)。一方、D PollardとR DeContoも、南極の過去500万年間を対象として数値モデル研究を行った。彼らは、陸の上にある氷床と海の上にある棚氷を連結したモデリングにより、陸氷と海氷との境界である接地線の動きをシミュレートした。その結果、過去500万年間に西南極氷床は、完全な氷河状態から中間的状態、そして崩壊状態の間をわずか数千年で移行していたことが示唆された。これは、この地域の海水温が5℃上昇したら氷床が崩壊する可能性を示唆している(Letter p.329, www.nature.com/podcast)。News & ViewsではP Huybrechtsが、これら2つの氷床の変動史再構築から予想される今後の氷床のふるまいについて論じている(p.295)。

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