Nature ハイライト

Cover Story:ブルームの働き:海洋への鉄肥沃化がもたらす生態学的コストと気候上の便益

Nature 656, 8126

上昇し続ける大気中の炭素濃度を抑え、気候変動の緩和に役立てるため、さまざまな戦略が提案されている。その1つが、海洋に鉄を散布して肥沃化し、海洋藻類の増殖を促す方法である。藻類は光合成によって炭素を隔離でき、死んで深層水へ運ばれると、その炭素も深海に封じ込められる。しかしこの戦略は、爆発的な藻類ブルーム、酸素の枯渇、隣接海域における栄養塩の枯渇など、深刻な生態学的副作用をもたらし得る。こうした問題の規模や、気候上の便益とのトレードオフについては、よく分かっていない。今週号ではJ Yuたちが、高度なモデルを用いて、10の海域において鉄肥沃化を60年間にわたって実施した場合の影響をシミュレートした結果を報告している。研究者たちは、この手法が炭素移出をもたらし得ることを確認し、炭素除去の効率が最も高い海域が太平洋と南大洋であることを特定した。しかし、赤道太平洋では、局所的なブルームが、他海域における栄養塩の利用可能性を撹乱する可能性があり、遠隔海域の動物プランクトンの生物量を低下させることも明らかになった。これに対し、南大洋では生態学的な悪影響が比較的小さかった。このため著者たちは、南大洋における鉄肥沃化が、生態系の撹乱とCO2隔離の最良の均衡をもたらす可能性があると示唆している。ただし、100年規模の時間スケールでは、炭素の再放出を含む、より広範な全球的影響が生じる可能性も残っている。

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