Nature ハイライト
Cover Story:内部が露出した星:超新星爆発を起こす大質量星が明かすその内部構造
Nature 644, 8077

Keck Observatory/Adam Makarenko.
大質量星は、中心核で核融合反応により生成された元素が重い順に並んだ、明瞭な層状構造を持つと予測されている。外層にはヘリウムのような軽い元素があり、内部に向かって炭素、酸素、硫黄、ケイ素と続き、中心には鉄が存在する、という具合だ。しかし、こうした層を観測することはほとんど不可能である。星の核が露出するのは超新星爆発する瞬間のみであり、その際には層が混合されやすいからだ。今週号ではS Schulzeたちが、星の最内層からの信号を捉えた、超新星2021yfjの観測結果を提示している。研究者たちは、星内部の深部で形成され、爆発直前に放出されたケイ素と硫黄に富む厚い殻を観測した。この観測結果は、この星の構造に関する予測を裏付ける可能性がある一方で、大質量星がどのようにして容易に外層を剝ぎ取られて最内層を露出させ得るのか、という疑問も提起する。表紙は、その瞬間の想像図であり、外層を失ってケイ素(灰色)、硫黄(黄色)、アルゴン(紫色)に富む内殻を露出した、爆発して超新星2021yfjとなる直前の大質量星を描いたものである。
2025年8月21日号の Nature ハイライト
原子核物理学:電気化学的に変えられる重水素融合率
材料科学:グラフェンの電子特性を高クオリティー化する方法
応用光学:フォトニック回路上に集積させたレーザーによる薄型ディスプレイ
電池:電解液設計によるパウチセル型Li金属電池のエネルギー密度向上
気候科学:海洋循環の減速に対する熱帯の応答がもたらす干ばつ
気候科学:人為起源の排出が駆動する太平洋十年振動の変動
古生物学:鳥類以前から手根の再編が起きていた
進化学:3Dプリンターを使って擬態を検証する
進化遺伝学:古代エジプト人の全ゲノム塩基配列解読
植物科学:単一細胞マルチオミクスで描いたイネの器官別細胞アトラス
神経科学:BWASのコスパを上げるには
神経回路:基底核と運動の関係を見直す
神経科学:幼少時の高フルクトース曝露が神経の発達を妨げる仕組み
代謝:減量が肥満の人の健康に与える影響の詳細
炎症:急性炎症と慢性炎症を区別する分子機構
免疫学:親の因果が子に報い
がん代謝:がん細胞は脂質を使ってフェロトーシスを抑える
生物工学:形の決まらないタンパク質領域を狙って結合する因子の作成
構造生物学:ヒトのクロマチンリモデリング因子SMARCAD1のサブヌクレオソーム選択性