Nature ハイライト
Cover Story:菌類が生み出す波:菌根菌が地下の栄養素交換のためのサプライチェーンネットワークを構築する仕組み
Nature 639, 8053
菌根菌は、土壌中に広大なネットワークを構築して植物の根と栄養素を交換している。こうした密なネットワークの多くは、菌糸と呼ばれる非常に細い管で構成されており、その長さは土壌1 cm3当たり100 mに達することもある。今週号では、L Oyarte GálvezとC Bisotたちが、こうした複雑なネットワークが作られる仕組みを明らかにしている。研究者たちは、50万以上の成長中の菌類ノードを同時に追跡するために、特注の画像化ロボットを作製して、菌糸内の細胞質の流れの軌跡を約10万回測定した。その結果、菌類はこれらのネットワークを自己調節する進行波として構築し、その中で、より速く成長する先端部のパルスが、後方にあるより遅く成長する菌糸体から広がる波を引き寄せて、栄養素の抽出がギリギリできる程度に両者間の空間を満たすことが分かった。栄養素が枯渇すると、菌類は生殖胞子の成長促進へと移行する。表紙の画像は、この波のような拡大過程を示しており、色はネットワークの端の年齢(明るい色ほど若い)を表している。
2025年3月6日号の Nature ハイライト
天文学:機械学習で中性子星合体をリアルタイムに推定
量子物理学:複数の希土類イオンによる2ノード量子ネットワーク
エネルギー科学:セル構成によるキロワット規模の弾性熱量冷却
太陽電池:多接合太陽電池用ペロブスカイト前駆体溶液における添加剤の役割
気候科学:季節によって異なるアマゾンの森林伐採の降水量への影響
惑星科学:火星の極冠が示す火星内部の粘性構造
生態学:ユーラシアの草原は北米の草原よりも干ばつに弱い
人類学:カサラベ文化を支えたトウモロコシの単一栽培
古代ゲノミクス:北ポントス地域のゲノム史
古代ゲノミクス:古代DNAが明かすヤムナ人の起源
神経科学:海馬ニューロンの特異化は実在するか
植物科学:次世代の「緑の革命」遺伝子の候補
微生物学:抗生物質によるサルモネラ菌排除を困難にしている原因
疫学:SARS-CoV-2変異株動態の包括的なモデル化
免疫学:抗体予防投与は免疫不全ウイルス感染を不顕性化する恐れがある
免疫学:in vivoで炎症を見るためのPETプローブ
生物工学:顧みられない熱帯病の強力な治療薬を低コストで新規に設計する
構造生物学:UM171がコリプレッサー複合体の分解を引き起こす仕組み
構造生物学:PIWIタンパク質の動的遷移