Nature ハイライト

医学:薬剤への応答を代謝の表現型から予測

Nature 440, 7087

欧州の研究チームが、患者の代謝表現型に基づいて個人に適した薬物治療を行う、新しい方法を提案している。ラットでは、この方法を使うと高用量のパラセタモールによって起こる障害が予測できることがわかった。  生物医学では、患者の遺伝子プロファイルに合わせて薬剤治療を考える薬理ゲノミクスに多くの期待が寄せられている。しかし、この方法の有益さには限界がありそうだ。その一因は、薬剤に対する反応の速さや薬剤の分解速度を考慮に入れていないことにあり、これらには個人の遺伝子だけでなく、食事、腸内細菌、年齢、病気、体内に存在するほかの薬剤なども影響する。  J Nicholsonたちは、薬理ゲノミクスに代わる「薬理メタボノミクス」という方法を提案している。彼らはラットの尿中の代謝産物を核磁気共鳴法で分析し、代謝にみられるいくつかの特定の特徴を使えば、有害量のパラセタモール投与による肝損傷の程度が予測できることを見いだした。これはおそらく、これらの特徴をみれば、薬剤から身を守る仕組みが体にどの程度備わっているかがわかるからだと思われる。  今回の原理証明実験によって、この方法は、対象者をふるい分け、どの薬剤をどの程度まで投与しても安全かを決定するのに使えそうだとわかった。またこの方法は、ほかの医療や、食事、生理的なものなど、あらゆる種類の問題に対する個々人の応答を予測するのにも使えるかもしれない。

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