Nature ハイライト

化学:過渡種との反応

Nature 586, 7828

ベンザインや環状アレンなどの過渡種は、新たな化学反応性を実現できる、潜在的に貴重だがつかの間の機会をもたらすため、非常に興味深い。しかし、こうした過渡性によって、反応性の制御は困難になる。今回N Gargたちは、不斉ニッケル触媒反応を用いることで、環状アレンを捕捉して立体制御を実現した。このニッケル錯体は、ひずんだ中間体の動的な速度論的分割を実行して、エナンチオ選択的に三環式ラクタム生成物を生じる。計算機研究の結果からは、最初に立体選択的オレフィン挿入を通した環状アレンエナンチオマーの速度論的区別が起こり、その結果生じる立体化学情報が喪失して、その後中間体であるπ-アリルニッケル錯体の非対称化を通して絶対立体化学の導入が起こる、という触媒機構が示唆された。今回の反応は特殊だが、示された概念はひずんだ環状分子の触媒的不斉反応をより広く開発する指針となるだろう。

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