植物科学:サリチル酸受容体による転写調節の機構
Nature 659, 8139 doi: 10.1038/s41586-026-11123-0
サリチル酸(SA)は、植物の防御応答を活性化する重要な植物ホルモンである。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)では、NONEXPRESSOR OF PATHOGENESIS-RELATED GENES 1(NPR1、別名NIM1)および機能的に冗長なNPR3とNPR4が、SAの感知を担う2系統のSA受容体として特定されている。しかし、SAがNPRタンパク質に結合して防御遺伝子の発現を誘導する機構は、依然として不明である。今回我々は、SAがNPR1を介して転写活性化を引き起こし、NPR3とNPR4を介した転写抑制を解除する仕組みを解明した。我々は、メディエーター複合体サブユニット15A(MED15A)が、NPR1と、転写を制御するメディエーター複合体との橋渡し役であることを突き止めた。SAは、NPR1とMED15Aとの直接的な相互作用を誘導する。構造解析と機能解析から、NPR1のMED15Aへの結合が、NPR1を介した転写活性化に必須であることが明らかになった。一方、SAは、NPR3とNPR4が媒介する転写抑制を解除する。NIMIN1(NIM1-interacting 1)は、NPR3、NPR4、および転写コリプレッサーTOPLESSと相互作用し、これらをポリコーム抑制複合体2に結び付けることによって、SA応答性遺伝子におけるH3K27トリメチル化を媒介する。SAは、NPR3およびNPR4それぞれとNIMIN1との相互作用を阻害し、標的遺伝子におけるH3K27トリメチル化レベルを低下させ、ヒストンアセチル化を増加させることで、NPR3とNPR4が媒介する抑制を解除する。我々の研究は、SAを介した防御遺伝子活性化の全体像を提示するものである。これらの知見は、より効果的なSA類似体を農薬として設計すること、およびSAの感知とシグナル伝達を操作して作物に抵抗性を付与することの基盤となる。

