遺伝学:あるメキシコ人集団における、複雑形質に対する家族内での祖先的効果
Nature 659, 8139 doi: 10.1038/s41586-026-11039-9
ヒトの集団間では、疾患の有病率や表現型が異なるが、そうした差異がどの程度遺伝的要因によって引き起こされているかは、大半の複雑形質については分かっていない。集団間での表現型の平均値の比較は環境の違いによって交絡しており、多遺伝子性の予測因子の使用は偏った推定につながることがある。遺伝的に混合した祖先系統を持つ人々を対象とした家族ベースの解析からは、祖先系統と環境の相関によって交絡されていない祖先的効果の推定が可能になる。今回我々は、メキシコシティー前向き研究の混血成人の遺伝的データを利用して、家族内での祖先的効果を推定した。血縁関係のない5万2583人と、1万7627家族の3万9714人の血縁者について、祖先集団から受け継いだ遺伝的差異と15の複雑形質を評価した。その結果、集団レベルでは、ヨーロッパ系統と比べて、アメリカ先住民系統の効果は、身長で−1.98 s.d.(P < 2 × 10−16)、2型糖尿病でオッズ比の自然対数は1.73(95%信頼区間、1.54~1.92)であった。家族内では、アメリカ先住民系統の効果は、身長で−1.51 s.d.(P = 10−8)、2型糖尿病でオッズ比の自然対数は5.13(95%信頼区間、2.48~7.78)であった。これらの効果は、形質を増強する対立遺伝子の数における祖先系統間の差異と、形質関連座位での選択を示す証拠によって裏付けられた。教育達成度や他の形質については、集団レベルでは有意な関連が見られたにもかかわらず、家族内での祖先的効果は認められなかった。これは、環境要因あるいは交絡の関与を示唆している。総合的に本研究は、祖先系統間の遺伝的効果を研究するための実験設計を提供するとともに、メキシコシティーの遺伝的に多様な集団には、身長、2型糖尿病、代謝形質について祖先系統による有意な差異があることを明らかにしている。

