植物科学:サリチル酸による植物免疫の転写活性化
Nature 659, 8139 doi: 10.1038/s41586-026-11021-5
植物の防御ホルモンであるサリチル酸(SA)は、その受容体であるNON-EXPRESSOR OF PATHOGENESIS-RELATED GENE 1(NPR1)を介してシグナルを伝達することで全身獲得抵抗性を誘導し、広範な転写再プログラム化をもたらす。しかし、NPR1がSAを感知して転写を活性化する分子機構は未解明のままである。今回我々は、SAがNPR1のSA結合ドメイン(SBD)を安定化し、メディエーター複合体のサブユニットであるMED15AとNPR1との相互作用をアロステリックに促進することを示す。我々は、NPR1のプロキシオーム(proxiome)とAlphaFoldによる構造予測を活用し、NPR1と、MED15AのKIX(kinase-inducible domain interacting)ドメインとの直接的な相互作用を特定した。我々は、組換えNPR1がSA依存的にMED15Aを動員すること、そしてMED15Aの結合が逆にNPR1のSAに対する親和性を高めることを示す。クライオ電子顕微鏡法と水素重水素交換質量分析により、SAとMED15AのKIXドメインが、それぞれ異なる界面を介してNPR1-SBDのSA結合コアを安定化することで、協調的にNPR1-SBDの三者複合体形成能を高めることが明らかになった。我々はさらに、SA–NPR1経路のリプレッサーであるNIMIN1が、NPR1-SBD上の同じドッキング部位を巡ってMED15Aと競合し、ホルモンの結合をアロステリックに阻害することによって、SAシグナル伝達に拮抗することを実証した。SAシグナル伝達におけるMED15Aの重要な役割を明らかにした従来の遺伝学的証拠と整合して、本研究の知見は、植物の免疫応答においてSAが転写活性化をどのように促進するかという長年の疑問に、機構的な解答を提示する。

