Article

神経科学:興奮性ニューロンでの異常なERBB4はアルツハイマー病病変を進行させる

Nature 658, 8136 doi: 10.1038/s41586-026-10964-z

神経炎症とシナプス喪失は、アルツハイマー病(AD)における認知機能低下と関連している。ミクログリアの過剰なファゴサイトーシス活性がシナプス喪失に関与することが示唆されているものの、これらの病理の根底にある機構については、まだよく分かっていない。本研究で我々は、マウスにおけるADの進行中に、アストロサイトとミクログリアが興奮性シナプスのファゴサイトーシスによる除去を増加させる一方、抑制性シナプスの除去を減少させることを実証する。この結果は、神経炎症自体はAD初期のシナプス喪失に必須ではない可能性を示唆する。これに対して、単一核RNA塩基配列解読解析では、ADマウスモデルにおける最も早期の主要な変化の1つとして、Erbb4(Erb-B2 receptor tyrosine kinase 4)の異所性発現を特徴とする早期応答性興奮性ニューロン(EREN)の出現が特定された。ADの興奮性ニューロンにおいて選択的にErbb4を欠失させると、異常な神経ネットワーク活動とシナプス喪失が阻止されるとともに、反応性グリオーシス、アミロイド斑の沈着、認知機能障害も抑制された。逆に、野生型の興奮性ニューロンにおけるErbb4を過剰発現させると、アミロイド斑を伴わずに、これらの中核的なAD様表現型が再現された。機構的には、これらの作用には、ERBB4の下流に位置するmTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル伝達が必要であった。続くトランスクリプトーム解析により、興奮性ニューロンのErbb4は、ERENと反応性グリオーシスを誘導するのに必要かつ十分であることが示された。さらに、ヒトのADトランスクリプトームデータを用いた、方向性を設定した媒介分析の結果も、興奮性ニューロンのERBB4が、アミロイド病理をタウの伝播と認知機能低下に結び付ける病態形成カスケードに関与しているとするモデルを裏付けている。これらの知見は、興奮性ニューロンにおける異常なErbb4の発現が、ADの病態生理の初期駆動因子であり、神経変性疾患全般の治療標的となり得ることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度