神経科学:神経発達障害において認知機能改善をもたらすPVニューロン可塑性の回復
Nature 658, 8136 doi: 10.1038/s41586-026-10907-8
海馬は、同時に活動する錐体ニューロン(PN)の集団に、経験の記憶を形成する。海馬の歯状回–CA3/CA2回路に存在する、高頻度発火型のパルブアルブミン発現抑制性ニューロン(PV IN)は、苔状繊維に依存したフィードフォワード抑制を介してPNの活動を精密に制御している。PV INは、自身の内因性興奮性、シナプス結合性、生理特性、可塑性特性に生じる経験依存的な変化を協調させることで、PNの活動を調整する。ここでは、こうした一連の経験依存的な変化を経験依存性PV IN可塑性と呼ぶ。神経回路が経験に対して高い感受性を持つ出生後早期のPV INの障害は、神経発達障害(NDD)の特徴である、ネットワークの過興奮性、発作、認知機能障害をもたらすと考えられている。本研究で我々は、成体海馬のCA3/CA2領域における経験依存性PV IN可塑性遺伝子(XPG)の制御因子を特定するため、入力特異的なトランスラトームスクリーニングを設計した。我々は、発現が上昇したXPG候補の相当な割合が、自閉スペクトラム症、てんかん、双極性障害、統合失調症においてハプロ不全を示すことを実証する。この結果は、NDDでは経験依存性PV IN可塑性が損なわれていることを示唆している。概念実証実験では、成体期のNDDリスクマウスモデルのCA3/CA2 PV INにおいて、XPG候補の1つであるホメオボックス遺伝子Meis2を標的としてその発現を上昇させるだけで、経験依存性PV IN可塑性を回復させるのに十分であることが分かった。さらに、ニューロンアンサンブルと鋭波リップルの特性、および認知機能が改善され、発作が抑制された。従って、経験依存性PV IN可塑性は、NDDリスク遺伝子が作用する共通の収束機構であり、成体期に再確立することによって、回路、ネットワーク興奮性、認知機能における発達の障害を解消できる。

