構造生物学:ブリッジ組換えの方向性を規定する構造機構
Nature 658, 8134 doi: 10.1038/s41586-026-10903-y
IS621などのIS110ファミリーのトランスポゾンに由来するブリッジリコンビナーゼは、ブリッジRNA(bRNA)と結合し、ドナーDNAとターゲットDNAの間のプログラム可能な組換えを仲介する。挿入はリコンビナーゼ–bRNA複合体によって仲介されるが、IS621エレメントが宿主ゲノムからどのように切り出され、転位に必要な環状DNA中間体を形成するのかは、依然として不明であった。今回我々は、大腸菌(Escherichia coli)ゲノム中のIS621座位からbRNAが低レベルで発現していること、およびIS621リコンビナーゼ–bRNA複合体が媒介する切り出しの効率は挿入の効率よりも低いことを報告する。さらに、切り出し反応のDNA基質に結合したIS621リコンビナーゼ–bRNA複合体のクライオ電子顕微鏡構造を決定し、切り出し反応のメカニズムに関する知見を提供する。切り出し複合体は、以前に報告されたドナーDNAおよびターゲットDNAが結合した挿入複合体と同様に、2つのリコンビナーゼ二量体からなり、一方の二量体がbRNAのターゲット結合ループを、他方がドナー結合ループを収容している。一方、2つの複合体のDNA認識様式には顕著な差がある。挿入の際にはドナーDNAとターゲットDNAが屈曲したU字形を形成するのに対し、切り出し基質は直線状のコンホメーションをとり、bRNAの2つのループにまたがって結合して、X字形の構造を形成する。この形状はトップ鎖交換の効率を低下させ、切り出しよりも挿入が優先されるという自然に観察される偏りの一因となる。こうした違いにもかかわらず、両反応の効率は、bRNA中のハンドシェイクガイドと呼ばれる特定のジヌクレオチド配列とDNA基質のトップ鎖との間の塩基対形成によって同じように調節されている。まとめると今回の研究は、IS110の転位サイクル全体のメカニズムに関する知見を提供し、プログラム可能なブリッジ編集を応用する際の最適な設計を促進するものである。

