気候科学:AIによる熱帯低気圧の現業予報
Nature 657, 8132 doi: 10.1038/s41586-026-10953-2
熱帯低気圧は、最も危険で大きな経済的損失をもたらす気象現象の1つであるが、その予報は依然として難しい。今回我々は、世界各地の熱帯低気圧の進路、強度、サイズについて最高水準のアンサンブル予報を生成する、人工知能(AI)に基づく現業気象モデルWeatherNext Cyclones(WN-C)を紹介する。WN-Cは、全球解析データと過去の熱帯低気圧の全球データベースを組み合わせて学習し、15日先までの、起こり得る全球の気象と熱帯低気圧のシナリオからなる大規模なアンサンブルを生成する。2023~2025年の熱帯低気圧を対象に評価すると、WN-Cによる進路、強度、風速半径の予測は、主要な現業モデルに対して予報リードタイムで平均1日以上の優位性を示した。この精度向上は、過去10年間の現業予報開発で見られた進歩に匹敵する。我々は、領域モデルと比べて数桁粗い入力データを用いてこれらの結果を達成した。これは、最高水準の強度予報に高解像度が厳密な必須条件ではなく、こうした粗い大気データには従来認識されていた以上に多くの強度に関する情報が含まれることを示唆している。加重平均によるコンセンサスアンサンブルにWN-Cの予測を組み込むと、その予報スキルは大幅に向上した。WN-Cのスケーラビリティーによって、従来の50メンバーのアンサンブルに比べてまれな事象をより的確に捉える、最大1000メンバーのアンサンブルが可能となる。今回の研究は、人間の予報担当者に高度な現業アンサンブル予報ガイダンスを提供することで、人命の保護と熱帯低気圧の壊滅的影響の軽減に役立つ、より信頼性が高く適時性に優れた予報・警報への飛躍的な進展を示している。

