物理化学:ウイルス様粒子の自己組織化の分子レベルの観察
Nature 657, 8132 doi: 10.1038/s41586-026-10948-z
生体分子の集合は、細胞の組織化の基礎を成している。その根底にある原理を明らかにすることは、生物学的機能と、疾患における機能異常を理解するために不可欠である。ウイルスキャプシドの集合は典型的な自己組織化系であり、生体分子の集合を支える基本原理の確立、そして新たな生体材料と治療法の開発において中心的な役割を果たしてきた。しかし、数十年にわたる実験的な取り組みにもかかわらず、ウイルスの自己組織化の経路とダイナミクスの観察および定量化は、依然として困難であった。今回我々は、マスフォトメトリー(MP)と単一分子捕捉法を組み合わせることで、個々のウイルス様粒子(VLP)の集合を分子分解能でリアルタイムに観測した。我々は、弱く可逆的な多価相互作用が、集合経路上にある、トポロジー的に閉じた限られた一群の中間構造の確率論的選択を促進することにより、集合過程を制御していることを示す。集合は、これらの中間体間の遷移速度によって精密に調節され、実効的に不可逆な一連の初到達事象を通じて進行する。それぞれに対応する初到達時間はVLPの対称性から生じ、これによって、最初のトポロジー的に閉じた中間体の形成と、それに続く伸長との間に時間的分離が生まれる。その結果、集合は全体として不可逆であるにもかかわらず、質量作用の法則と整合する平衡分布をもたらす核形成・成長機構につながる。この過程の熱力学と速度論の特性を評価することで、取り得る集合中間体が数千もあるにもかかわらず、系が高い忠実度で1つの最終構造へ特異的に集合する仕組みが明らかになった。より広く言えば、今回の手法は、多量体からなる生体分子機械のダイナミクスを分子レベルで可視化し、定量化するための一般的な枠組みとなる。

