Article
がんモデル:腫瘍由来オルガノイドバイオバンクによるがんの遺伝子依存性マッピング
Nature 657, 8132 doi: 10.1038/s41586-026-10830-y
がん細胞株は今も研究や創薬の基盤であり続けているが、腫瘍の多様性を完全には捉えておらず、対応する患者の背景状況が欠如しており、培養への適応も経ている。腫瘍オルガノイドは患者組織に由来する三次元培養物であり、細胞株に対する強力な補完となる。本研究で我々は、大腸がん、食道がん、卵巣がん、膵臓がん、胃がんに直接由来し、臨床情報の注釈付けを行った256の腫瘍オルガノイドを、継続的に増殖・供給できる遺伝的に安定なモデルとして樹立し、その特性評価を行った。それぞれのモデルとそれらに対応する患者腫瘍試料について、全ゲノム塩基配列解読およびトランスクリプトーム塩基配列解読を含む広範な特性評価を行い、162のオルガノイドにわたるゲノム規模CRISPR–Cas9スクリーニングによって遺伝子依存性をマッピングした。統合的な解析により、ありふれたサブタイプとまれなサブタイプの両方にわたって、依存性のゲノムマーカーと臨床マーカーが明らかになり、オルガノイド特異的な必須遺伝子が特定された。また、治療前と治療後でペアにした試料において、腫瘍進化に伴う標的化可能な脆弱性が明らかになった。大腸がんにおけるEGFR–RAS–MAPK軸の機能的および薬理学的な検討により、KRASバリアント対立遺伝子によって作用が異なることが明らかになった。この誰でも利用できる公開研究資源は、患者由来のオルガノイドにおける遺伝子依存性を体系的に示す地図を提供し、精密腫瘍学の進展に必要なモデルの多様性と機構的知見を拡張するものである。

