がんモデル:多様ながんに対する次世代の患者由来モデルの総覧
Nature 657, 8132 doi: 10.1038/s41586-026-10806-y
新たな治療法の開発と、がんの病態形成機構の検証には、実際のがんを代表する実験モデルが必要である。しかし、既存のモデルコレクションは、ヒトのがんで観察される多様性のごく一部しか反映していない。近年の技術により、腫瘍オルガノイドなどのin vitroモデルを効率的に樹立できるようになった。しかし、これらのモデルが、長期的な増殖の間に患者腫瘍の本質的な特性を維持しているのかどうかは、体系的には調べられていない。今回我々は、大規模な国際プログラムであるヒトがんモデルイニシアチブ(HCMI)の成果を報告する。HCMIでは、25のがん種にわたる2780人のドナーから665の次世代モデルで構成される研究資源を作製し、腫瘍とモデルの全ゲノム解析、エキソーム解析、メチローム解析、トランスクリプトーム解析を統合した。この研究資源は、包括的な臨床データを伴う522のモデルと、まれながんの153のモデル、非ヨーロッパ系祖先を持つ参加者からの71のモデルを提供する。腫瘍とモデルを対応付けした421ペアの解析から、高い遺伝学的一致(97.8%)とエピジェネティックな一致(95%)が明らかになり、モデルの不一致に関連する因子が特定された。腫瘍–モデルペアの単一核RNA塩基配列解読により、一部のモデル群では培養条件が細胞状態に著しい影響を及ぼすことが明らかになった。さらに、治療抵抗性を研究する機会を提供するために、染色体外DNAと治療後の変異シグネチャーがモデルでどのように保持されるかを特性解析した。マルチモーダルな分子プロファイリング、臨床情報、統合解析用ソフトウエアツールを含め、このモデルリポジトリは、研究コミュニティーへの提供が進められており、発がん機序や治療応答を前臨床段階で研究するための有益な情報資源となる。

