物性物理学:収束電子プローブによる原子スケールの二重スリット干渉計測
Nature 657, 8130 doi: 10.1038/s41586-026-10914-9
ヤングが光を用いて行った先駆的な研究以来、二重スリット干渉実験は、波動と粒子の二重性を実証する代表的な実証法となっている。この実験は今や、電子、中性子、原子、分子を用いる現代の干渉計の基盤となっており、その干渉縞の可視度と位相は、波と回折対象の両方に関する定量的な情報を反映している。この手法を原子スケールにまで拡張することで、微視的な構造とダイナミクスを直接、局所的に調べられるようになるが、これは今まで検討されてこなかった。今回我々は、結晶内部において原子スケールでの二重スリット干渉法を実現できることを示す。我々は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用い、1.36 Åの間隔で隣接する2本のSi [110]原子カラムにわたって非局在化した収束電子ビームにより、干渉縞が生成されることを実証した。有限温度下では、これら2つの原子「スリット」が強く振動し、それらの運動が干渉縞に記録される。干渉縞は、300 Kから900 Kの範囲で維持され、これは、一部のフォノンモードのみが可視度を低下させることを示している。すなわち、隣接原子間の相関した熱振動によって、原子が独立に運動していれば破壊されるはずのコヒーレンスが維持される。この維持された可視度の定量解析により、一対の原子カラム間の振動相関を実験により直接調べることが可能となった。これらの相関は、特定の原子結合が持つ異方的な剛性に対応しており、熱輸送に影響を及ぼす低エネルギーフォノンのダイナミクスを調べる手段となる。結晶を原子スケールの干渉計として捉え直すことによって、この枠組みは、局所的な原子配列とそれらの相関ダイナミクスを直接可視化することを可能にし、単一結合レベルでの格子ダイナミクスを調べる道を開く。

