生物工学:二本鎖切断を伴わない効率的かつ精密でプログラム可能なDNAノックイン
Nature 657, 8130 doi: 10.1038/s41586-026-10819-7
プログラム可能な遺伝子ノックインは、遺伝性疾患の治療や細胞療法の進展に大きな可能性をもたらす。しかし、キロ塩基規模のDNA断片を正確かつ効率的に組み込むことは依然として難しい。今回我々は、DNA二本鎖切断を伴わずに、キロ塩基規模のDNAを、効率的かつ精密に、プログラム可能な形で挿入する、KNIT(CRISPR kilobase-scale nickase-targeting)編集法について報告する。この編集法は、Cas9ニッカーゼとDNAドナー動員システムを共役することで実現された。KNIT編集法は、0.7 kbから10 kb以上までのDNA断片のプログラム可能な組み込みを可能にし、さまざまなゲノム座位および細胞タイプにわたって有効である。KNIT編集法は最大89%の効率を達成するとともに、意図しないインデル(挿入・欠失)の発生率、転座、オフターゲット編集を顕著に減少させた。この系は、反復的な挿入編集と、転座を最小限に抑えた複数座位への遺伝子ノックインに対応する。その改良版であるKNITエディター2では、単回トランスフェクションでの効率がさらに向上した。KNIT編集はまた、病的変異を有する細胞で、治療用遺伝子をセーフハーバー座位またはその元来の座位へ挿入することで、正常な遺伝子発現を回復させた。特筆すべきことに、KNIT編集法は、二本鎖切断を伴わずに、臨床的に意義のある効率で、ウイルスを用いないプログラム可能なキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)の作製を可能にした。そして、作製されたこのCAR-T細胞は、in vitroおよびマウスモデルにおいて、効果的な抗腫瘍活性を示した。従って、KNIT編集法は、意図しない結果を減らしつつ、二本鎖切断を生じずに、プログラム可能かつ部位特異的なキロ塩基規模のDNA挿入を実現することにより、個別化医療を推し進めるための汎用性の高いプラットフォームを提供する。

