Article
素粒子物理学:偏極とエンタングルメントを通じてバリオンのセミレプトニック崩壊を探る
Nature 657, 8130 doi: 10.1038/s41586-026-10818-8
カビボ–小林–益川(CKM)行列のユニタリー性は、標準模型(SM)の基礎である。このユニタリー性の精密な検証には、ストレンジクォークとアップクォークの間の遷移を支配する|Vus|など、CKM行列要素を独立に決定する必要がある。K中間子崩壊およびタウ粒子崩壊から現在得られている測定結果には不一致が見られ、これはSMを超える物理の存在を暗示している可能性がある。ハイペロンのセミレプトニック崩壊は代替のプローブとなるが、これまでの実験では十分な運動学的情報が不足しており、関連する形状因子に対する測定感度が得られなかったため、ほとんど活用されてこなかった。今回我々は、Λ → pe− νeにおける、軸性ベクトル結合と弱磁気結合の測定結果、ならびに絶対分岐比と弱電気結合の初めての決定について報告する。これは、J/ψ共鳴で生成されるΛ Λ対の偏極と量子エンタングルメントを利用することで実現された。今回の結果を、最近の格子量子色力学(QCD)計算の結果と組み合わせると、|Vus|LQCD = 0.2339 ± 0.0041が得られた。これは、モデルに依存しない決定値であり、CKMのユニタリー性と整合する。バリオンのセミレプトニック崩壊における偏極と量子エンタングルメントを利用する先駆的な今回の方法は、単一事象当たりの感度を向上させるとともに、他のバリオンのセミレプトニック崩壊にも広く適用可能なものであり、K中間子崩壊に匹敵する精度を達成し、SMの厳密で独立した検証を実現する体系的な研究プログラムに向けた基盤を確立する。

