環境社会科学:食料システムの変革は世界の農業を再編する
Nature 657, 8130 doi: 10.1038/s41586-026-10775-2
食料システムは、プラネタリーバウンダリーを超過させる主要な原因の1つであり、質の低い食事は世界的に主要な死亡リスクとなっている。さらに、将来予測されている人口と所得の増加は、これらの問題を一層悪化させる可能性がある。これを受けて、健康的かつ持続可能な食料システムへの変革が求められている。しかし、こうした変革が農業にもたらす影響の規模と分布については、十分に検討されていない。本研究で我々は、健康的な食事への移行(EAT–Lancet基準食の採用)、生産性の向上、食品廃棄物の半減に向けた食料システムの変革によって、2050年までに世界の農業が根本から再編され、その複数の側面で歴史的傾向からの逸脱が見られることを示す。10種類の世界経済モデルからなるマルチモデルアンサンブルを用いたシナリオシミュレーションの結果から、農地面積は2020年の水準と比較して中央値で6%減少する(+1%~−26%)ことが分かった。2050年までに、農業生産量は現状維持の予測より17%減少し(−2%~−32%)、経済的に見た生産価値は1兆6000億米ドル、率にして26%低下する(+8%~−58%)。その内訳を見ると、畜産物の生産価値は現在の2050年予測を大幅に下回る一方(−49%~−83%)、野菜、果実、ナッツ、豆の生産価値は23%増加する(−33%~+106%)。これらの結果は、変革シナリオを実現するためにどのような政策を想定するかに左右される。我々は、このような変革がもたらす便益、すなわち人々の健康の改善と環境圧力の軽減を考慮し、その影響を巡る政治経済に対処する上で、食料政策がより積極的な役割を果たすことを強調する。

