Review
医学研究:MASHの分子機構と発症機序
Nature 657, 8130 doi: 10.1038/s41586-026-10529-0
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、その進行型である代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を含め、メタボリックシンドロームが肝臓に現れた病態であり、多臓器疾患であるとの認識が高まりつつある。MASLDは現在、世界で最もよく見られる慢性肝疾患であり、肝移植の適応となる症例も増えている。座りがちな生活様式、肥満の蔓延、2型糖尿病などの関連病態を背景として、MASLDの発症率は上昇し続けている。MASHは、繊維症や肝硬変、そしてがん関連死の主要原因の1つである肝細胞がん(HCC)の重要なリスク因子である。過去10年間で、MASLDの発症と進行を駆動する分子機構と細胞機構の解明に大きな進歩が見られている。主要な発症過程には、インスリン抵抗性、遺伝的な駆動因子、肝脂質代謝の調節異常、脂肪毒性、脂肪組織機能障害、免疫介在性炎症、繊維形成、腸–肝軸の摂動が含まれる。機構に関するこれらの知見によって、臨床へのトランスレーションに提供される情報が増えてきている。また、遺伝的リスクバリアントと多遺伝子リスクスコアにより、疾患の進行やHCCについて、より精度の高いリスク層別化が可能になり始めている。さらに、肝臓での脂質生合成を低減させたり、ミトコンドリア代謝を調節したりする手法など、特定の代謝経路を標的とする治療戦略が登場している。本総説で我々は、MASHの発症機序とそのHCCへの移行の根底にある分子機構および細胞機構について、最先端の知見を取り上げる。

