免疫学:露出したホスファチジルセリンはT細胞疲弊における抑制性分子である
Nature 653, 8115 doi: 10.1038/s41586-026-10266-4
がんや慢性感染において、CD8 T細胞の疲弊は、PD1、TIM3、LAG3などの抑制性受容体の発現を特徴とする。従って、抑制性分子の研究は細胞表面タンパク質に限定されてきた。今回我々は、細胞表面脂質代謝物であるホスファチジルセリン(PS)を疲弊の調節因子として評価する。PSは主に生細胞の細胞膜の内側に局在するが、細胞死の際に細胞膜の外側に露出することがよく知られている。生きた免疫細胞上に露出したPSの役割はあまり明らかになっていない。我々は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)感染において、生存している抗原特異的CD8 T細胞がPSを外側に露出させることを示す。T細胞の活性化がPSの最初の外側への露出を誘導し、慢性的な抗原刺激がその外側への露出を持続させた。トランスクリプトーム解析およびリピドーム解析からはまた、疲弊したCD8 T細胞におけるPS蓄積が明らかになった。疲弊における露出したPSの役割を評価するため、我々はLCMV慢性感染マウスにPSを標的とする抗体(mch1N11)を投与し、LCMV特異的CD8応答が増強されることを見いだした。PD1+TCF1+幹細胞様CD8 T細胞は、抗体投与後に静止期関連遺伝子モジュールの発現が低下し、増殖が増加した。これは、PSに抑制性の役割があることを浮き彫りにしている。機構としては、T細胞に露出したPSは、樹状細胞の免疫刺激表現型を抑制するよう外因性に機能し、結果としてCD8 T細胞応答を制限する。PSを標的とする抗体は抗PDL1抗体と相乗的に作用して、CD8応答を増強し、ウイルス制御を改善した。さらに、ヒト腫瘍由来のPD1+ CD8 T細胞もPSを露出し得ることが分かった。まとめると、我々は、CD8 T細胞のPSの生物学的性質を詳細に明らかにし、露出したPSが疲弊において「非従来型」の外因性抑制性分子として機能する機構についての手掛かりを示している。

