生物工学:遺伝的にコードされた集合体型レコーダーは細胞の履歴を時間分解して記録する
Nature 652, 8111 doi: 10.1038/s41586-026-10323-y
細胞は、細胞内外からの合図に応じて、分子の状態を絶えず変化させている。組織内での細胞の活動を時空間的に正確にマッピングすることは、器官の生理的または病理的性質やその再生過程を理解する上で不可欠である。細胞を感知する現在の方法は、静止状態のスナップショットを撮影するエンドポイント解析か、少数の細胞からなる部分集団を観察する実時間観察のどちらかを主な基盤とする方法である。今回我々は、計算的に設計されたタンパク質集合体を細胞内記憶装置として活用して、個々の細胞の履歴を記録するin cellulo記録プラットフォームであるGEMINI(granularly expanding memory for intracellular narrative integration)を開発した。GEMINIは生細胞内で予想通りに成長し、細胞内の事象を年輪に似た蛍光パターンとして捉え、画像化ベースの遡及的な読み出しとして得ることができる。それにより、細胞の活動履歴の絶対的な経時的情報が、時間レベルの精度で取得できる。GEMINIは、NF-κBを介した転写の違いが見られる変化を効率良くマッピングし、これにより、15分という速い動的変化を分解して、定量化できるシグナル振幅を与えることができる。異種移植モデルでGEMINIを用いたところ、炎症が誘発するシグナル伝達の動態を組織全体にわたって記録することができ、これによって血管の密度と結び付いた空間的不均一性が明らかになった。マウスの脳で発現させた場合、GEMINIはニューロンの機能への影響が最小限であり、ニューロンの転写の変化と活動パターンの両方を解像できた。これらを総合すると、GEMINIは培養細胞と完全な状態の組織の両方において、生理過程・病理過程の基盤となる細胞動態の時空間的にマッピングするための確実で一般化可能な方法をもたらす。

