量子物理学:スケーラブルな量子中継器に向けた長寿命遠隔イオン間エンタングルメント
Nature 652, 8108 doi: 10.1038/s41586-026-10177-4
量子通信、量子計測、分散型量子コンピューティングを統合した量子ネットワークは、安全で効率的な情報転送、高分解能センシング、情報処理の指数関数的な高速化を実現できる可能性がある。長距離にわたる決定論的なエンタングルメントの配送は、スケーラブルな量子ネットワークの前提条件となる。しかし、光ファイバー内の指数関数的な光子損失が、効率的で決定論的なエンタングルメント配送の妨げとなっている。量子メモリーを用いてエンタングルメントのスワッピングとエンタングルメントの純粋化を組み込んだ量子中継器は、光ファイバーを用いた量子ネットワークにおけるこの限界を克服する最も有望な手段である。数多くの先駆的な取り組みにもかかわらず、遠隔のメモリー間の量子エンタングルメントが長距離にわたって確立されて純粋化される前に急速にデコヒーレンスが生じてしまう、という重大なボトルネックが依然として残っている。今回我々は、10 kmの光ファイバースプールで接続された2つのノード間のメモリー間エンタングルメントが、平均的なエンタングルメント確立時間を超えて残存することを実証する。これは、長寿命の捕捉イオンメモリー、効率的な通信インターフェース、高可視性単一光子エンタングルメントプロトコルを開発することによって可能となった。応用として、我々は、10 kmにわたる有限サイズ解析を用いた原理実証型のデバイス非依存量子鍵配送の実証と、漸近極限における101 kmの距離での正の鍵生成速度を報告する。これらの距離はいずれも、これまでの研究成果を2桁以上上回るものである。今回の研究は、量子中継器に不可欠な構成要素を提供するとともに、スケーラブルな量子ネットワークに向けた重要な一歩である。

