ウイルス学:生体分子凝縮体シードの事前組み立てはRSVの複製を駆動する
Nature 652, 8108 doi: 10.1038/s41586-025-10071-5
感染の過程で、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を含む多くのRNAウイルスは、ウイルスの転写と複製が起こる特殊な生体分子凝縮体であるウイルス工場(VF)を形成する。逆説的だが、凝縮体の核形成には通常、高いタンパク質濃度が必要となる一方で、感染時に十分なタンパク質レベルに達するには、ウイルスの転写や複製のためにVFが必要だと考えられる。本論文で我々は、ウイルスがいかにしてこの矛盾を解決してVFを形成しているかを明らかにするため、RSVの感染早期を、単一ゲノムウイルスリボ核タンパク質(vRNP)分解能でリアルタイムに可視化した。我々の結果は、VFの核形成は細胞質でde novoに起こるのではなく、感染しているvRNPから核形成されることを示している。VFの核形成には、さらにビリオン内でvRNP上にウイルスタンパク質間相互作用ネットワークを事前に組み立てて、「複製前中心」(PRC)を形成する必要がある。PRCは、ウイルスタンパク質を効率良く動員して保持するため、強力な凝縮体核形成シードとなる。また、PRCの高親和性は、結果的にウイルスポリメラーゼやその補因子の結合を高め、これによってVFが存在しない状態でも効率的なウイルス転写が可能となる。これらの活性が合わさって、迅速なVF形成を駆動するフィードフォワードループを作り出す。PRCの組み立てはビリオン内のウイルスタンパク質レベルに依存し、ビリオン間で高度に不均一であり、これが感染の進展における細胞間の不均一性を説明するとともに、不均一なビリオンが感染の不均一性の重要な原因であることを明らかにしている。まとめると我々の結果は、ビリオン内でのPRCの事前組み立てが宿主細胞への侵入時のウイルス凝縮体核形成を始動させ、RSV感染における細胞間不均一性を説明することを示している。

