微生物学:プロファージがコードする不稔感染タンパク質は宿主とプロファージの拡散を維持する
Nature 652, 8108 doi: 10.1038/s41586-025-10070-6
大部分の病原性細菌は多重溶原菌であり、垂直伝播したプロファージを多数有している。これらのプロファージは、毒力因子や抗ファージ防御系をコードすることによって細菌の病原性と生存を高めつつ、水平伝播する能力も保持している。従って、プロファージにコードされた抗ファージ防御は、それらをコードするプロファージの拡散を阻害することなく、外来性ファージの増殖を抑制しなくてはならない。今回我々は、サイフォウイルス科(Siphoviridae)のファージを制限する、単一のHEPNドメインタンパク質から構成されるGifsy-1プロファージ上にコードされた不稔感染システムであるHepSを突き止めた。我々は、HepSが、本来の宿主環境であるネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)の状況において、ファージ感染を感知するとともに不稔感染を起こすことを実証する。HepSの構造から、これが四量体ヌクレアーゼ複合体であることが明らかになり、この複合体は、新しいファージ粒子を作り出す際に、サイフォウイルスの尾部先端タンパク質を認識するとアロステリックに活性化される。HepSは、一度活性化されると、特定の転移RNAのアンチコドンループを切断し、ファージ複製を停止させる。Gifsy-1自体もサイフォウイルス科だが、HepSを作動させない尾部先端バリアントを発現することによって自己標的化を回避しており、これは共存するサイフォウイルスプロファージであるGifsy-2やGifsy-3も同様であった。この回避によって、Gifsy-1はHepSをコードするにもかかわらず拡散できる。これらの知見は、プロファージがその増殖能力を維持したまま宿主を防御する機構を明らかにしている。

