Article

古代DNA:ヨーロッパにおける初期のイヌのゲノム史

Nature 651, 8107 doi: 10.1038/s41586-026-10112-7

形態学的に特定可能な最古のイヌの遺骸はヨーロッパで発見されており、その年代は少なくとも1万4000年前にさかのぼるが、初期のイヌの遺骸は他の地域でも見つかっている。ヨーロッパにおける初期のイヌの起源およびそれらの他のイヌとの関係は、ゲノム規模データがないために明らかになっていない。同様に、イヌは農耕以前に家畜化された唯一の動物であるにもかかわらず、西南アジアからの新石器時代の農耕民の到達が、ヨーロッパの中石器時代の狩猟採集民と共に暮らしていたイヌにどのような影響を及ぼしたのかについても、ほとんど分かっていない。本研究で我々は、旧石器時代と中石器時代のヨーロッパに由来する181点を含む、イヌ科動物の遺骸216点を解析した。我々は、内在性DNAを10〜100倍濃縮するゲノム規模の捕捉法を開発し、216点の遺骸のうち141点でイヌとオオカミの系統を区別することができた。我々が回収した最古のイヌのデータは、スイスのケスラーロッホ遺跡で見つかった1万4200年前のイヌのもので、その系統は後に世界各地に広まったイヌの系統と同じであることが分かった。この結果は、ヨーロッパの後期旧石器時代のイヌは別の家畜化過程に完全に由来する、という仮説と矛盾する。ケスラーロッホのイヌは既に、アジアのイヌよりも、ヨーロッパの中石器時代、新石器時代および現代のイヌに対して類似性が高く、これは、イヌの遺伝的多様化が1万4200年前よりはるか前に始まっていたことを示している。西南アジアの系統のヨーロッパへの流入が新石器時代であったことが明らかになったが、これはヒトにおける事象よりも小規模であったと見られ、中石器時代のイヌが、新石器時代や、おそらく最終的には現代のヨーロッパのイヌにも大きく寄与したことを示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度