古生態学:現代のカリブ海のサンゴ礁における栄養段階の単純化を示す化石同位体の証拠
Nature 651, 8107 doi: 10.1038/s41586-025-10077-z
カリブ海のサンゴ礁では、サンゴや魚類の群集が人為起源の大規模な変化を受けてきたが、そうした変化が栄養動態にどのような影響を及ぼしたかについては、人類の影響を受ける前のサンゴ礁の栄養構造の再構築が困難であるため、いまだ十分には理解されていない。しかし現在、化石に残されたタンパク質の窒素同位体(15N/14N)分析の進歩によって、15Nと14Nとの比が動物の栄養段階上の位置を反映することを利用して、過去の栄養動態の再構築が可能となっている。本研究で我々は、パナマのカリブ海沿岸とドミニカ共和国に由来する現代および先史時代(7000年前)の魚類の耳石とサンゴに対し、特に低次から中次の栄養段階の魚類に注目して、この方法を適用した。その結果、高次栄養段階にある魚類では栄養段階が概して経時的に低下していたのに対し、低次栄養段階の魚類では栄養段階が上昇するか、変化していなかったことが明らかになった。これは、パナマとドミニカ共和国の両方において、現代のサンゴ礁の食物連鎖が先史時代のものより60~70%短いことを示している。さらに、全ての栄養段階の生物群にわたって食性の多様性が著しく低下しており、現代のサンゴ礁では先史時代のサンゴ礁と比べて栄養段階の幅が20~70%縮小していることが分かった。このパターンは、現代のサンゴ礁における食性の特殊化が少ないことで最もよく説明され、これは、現代のサンゴ礁の生態系が先史時代のサンゴ礁ほど複雑ではないことと一致する。こうした差異は、現代のカリブ海のサンゴ礁に起きた栄養構造の単純化を記録・定量化するものであり、このような変化は生態系の崩壊に対する脆弱性を増大させる可能性がある。

