発生生物学:自閉症のヒト幹細胞モデルにおける発生の収斂と分岐
Nature 651, 8106 doi: 10.1038/s41586-025-10047-5
20年にわたる自閉スペクトラム症(ASD)の遺伝学的研究により、まれなリスク変異を持つ遺伝子が100以上明らかになっている。このように大きな不均一性があるにもかかわらず、トランスクリプトーム解析やエピジェネティック解析では、ASD死後脳全体で収斂的な調節異常パターンが特定されている。我々は、ASD関連変異の共通機構と個別の機構を特定するため、厳格な品質管理後の70系統のヒト誘導多能性幹(hiPS)細胞からなる大規模コレクションを構築した。このコレクションは、8種類のASD関連変異、特発性ASD、非罹患対照例由来の20系統を網羅している。今回我々は、これらのhiPS細胞株を用いて、ヒト大脳皮質オルガノイドを作製し、in vitro分化後100日目までの4つの異なる時点でRNA塩基配列解読によるプロファイリングを行った。早期の時点では最も大きな変異特異的変化が見られたが、発生が進むにつれて異なる変異が共通する転写変化へと収斂した。我々は、ASDリスク遺伝子が濃縮されていて、観察された下流の遺伝子発現における変化を駆動すると予測される共通のRNAおよびタンパク質相互作用ネットワークを特定した。誘導ヒト神経前駆細胞でこれらの候補転写調節因子のCRISPR–Cas9スクリーニングを行った結果、これらの下流の収斂する分子効果が確証された。今回のデータは、遺伝的に定義されたASDの形態に関連するリスクが、転写調節を介してどのように伝播し、収斂的に調節異常を起こしている経路に影響を及ぼし得るかを明らかにしており、これによってASDの遺伝的リスクがヒトの神経発生に与える収斂的影響についての新たな手掛かりがもたらされた。

