細胞生物学:PAF15–PCNAの枯渇はDNA複製の鎖特異的制御を支配する
Nature 651, 8105 doi: 10.1038/s41586-025-10011-3
真核生物のゲノム複製はS期チェックポイントによって調べられ、これが連続的な複製起点の活性化を協調させて、律速となるレプリソーム成分の枯渇を防いでいる。ただ、この成分についてはこれまでほとんど解明されていない。今回我々は、複製起点の過剰な発火が、クロマチンに結合した増殖細胞核抗原(PCNA、DNAポリメラーゼの連続反応性を助け、岡崎フラグメントのプロセシングに関わるスライディングクランプ)を飽和させて、チェックポイントによる制御が失われた際に、それ以上のPCNAの結合とラギング鎖の合成を制限することを明らかにした。PCNA関連因子15(PAF15)は、この制限過程の用量感受性の調節因子であることが分かってきている。異常のないS期には、可溶性PAF15プールの全てがクロマチンに結合し、過剰な複製起点活性化が起こった場合にPCNAを安定化するための予備が存在しなくなる。PAF15は、高親和性のPIPモチーフを介してラギング鎖上のPCNAに特異的に結合してDNAの回りを囲むチャネルを占有し、これによってPCNAクランプとそれに結合した酵素群がATAD5–RFC複合体の働きによって中途で外れてしまうのが防がれる。逆に、PAF15の過剰発現、もしくはリーディング鎖への強制的な結合が起こると、レプリソームの進行が止まり、細胞死が引き起こされる。これらの有害事象は、PAF15–PCNAのリーディング鎖への結合を阻害するTimeless–Claspinによって緩和される。PAF15の発現はE2F4を介した抑制によって微調整されており、最適量と鎖特異性が確保されている。これらの知見によって、これまで知られていなかったレプリソームへの制約が明らかになった。PAF15–PCNA複合体が枯渇すると、S期チェックポイントが複製起点の活性化を全般的に制限し、これが鎖特異的な律速機構を全体としての複製動態と結び付けている。

