量子通信:集積フォトニクスを用いた大規模量子通信ネットワーク
Nature 651, 8104 doi: 10.1038/s41586-026-10152-z
量子鍵配送(QKD)は、量子力学の原理を利用して、証明可能安全な通信を可能にする。しかし、長い通信距離にわたって多数のクライアントとの大規模QKDネットワークを構築する上では、依然として1つの大きな課題が存在する。量子リレーには、いまだ実用上の困難が付きまとうものの、既存の信頼できるノードのネットワーク、ポイント・ツー・マルチポイント・ネットワーク、波長多重エンタングルメントネットワークは、信頼できる中間機器への依存や通信距離の限界などの課題に突き当たっている。ツインフィールド量子鍵配送(TF-QKD)は、これらの課題を克服しつつ通信距離を延ばすことのできる有力なアーキテクチャーを提供する。長距離のポイント・ツー・ポイントTF-QKDは達成されているが、大規模ネットワークの実現にはスケーラブルな量子デバイスが必要となる。今回我々は、並外れたスケーラビリティーと信頼性を有する集積フォトニクスTF-QKDネットワークの原理実証を報告する。このネットワークには、クライアント側の20の独立したQKD送信器チップとサーバー側の1つの光マイクロコムチップが含まれる。このマイクロコムは、線幅がHzレベルの超低雑音でコヒーレントな周波数コムを広帯域に生成し、これが全クライアントチップ用の種信号および基準信号として働く。各クライアントチップは、マイクロコムに位相同期した超低雑音光を再生成し、量子鍵を準備する。我々は、10本の波長多重チャネルを通じて20のクライアントチップにわたってペアワイズQKDを逐次実装し、これら10本のチャネルが全て370 kmの光ファイバースプールにおいてリピーターレス限界を上回った結果、ネットワーク能力(クライアントペア数×通信距離)として3700 kmを達成した。さらに我々は、サーバー側のマイクロコムチップとクライアント側のQKD送信器チップの再現性を共にウエハースケールで実証し、合わせてシステムレベルのスケーラビリティーを確立した。集積フォトニクスの量産性、費用対効果、高いスケーラビリティーと長距離量子通信を組み合わせることは、大規模量子ネットワークへの実現可能な道筋となる。

