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発生生物学:胎仔肝細胞はフェチュインAを介してHSPCゲノムを保護する

Nature 637, 8045 doi: 10.1038/s41586-024-08307-x

急速に増殖する細胞においてゲノム完全性を維持することは、胚発生の際の大きな難題である。細胞固有の機構が多数明らかにされているが、組織形成中の細胞に対するゲノム保護作用や発生中の組織微小環境の影響についてはほとんど分かっていない。今回我々は、胎仔肝臓の肝細胞が造血幹・前駆細胞(HSPC)ゲノムを保護していることを示す。マウスにおいて細胞系譜を追跡したり除去したりすることにより、初期胎仔肝臓における肝細胞の発生遅延が、新たに生着するHSPCの染色体不安定性を上昇させることが実証された。さらに、HSPCは肝細胞馴化培地中の遺伝毒性物質に対して耐性を獲得したことから、肝細胞がHSPCゲノムをパラクリン方式で保護していることが示唆された。プロテオーム解析により、肝細胞馴化培地ではフェチュインAが豊富に存在するが、初期胎仔肝臓ではフェチュインAは豊富に存在しないことが実証された。フェチュインAはToll様受容体経路を活性化して、胎仔肝臓においてDNA複製と遺伝子転写を行っているHSPCに病原性Rループが蓄積するのを防いでいることが分かった。白血病誘発変異に頻繁に関与する多数の造血調節遺伝子は、Rループが豊富な領域と関連していた。Fetuaノックアウトマウスでは、HSPCはゲノム不安定性が増大して、悪性腫瘍誘発に対する感受性が上昇していた。その上、フェチュインA濃度の低さと小児白血病の発がんは相関していた。従って我々は、発生中の組織で働いている新たな機構を明らかにしており、この機構は組織形成中の細胞のゲノムの保護をもたらし、発生関連疾患に関係している。

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