免疫学:重症マラリアの毒性タンパク質に対する広域抑制抗体
Nature 636, 8041 doi: 10.1038/s41586-024-08220-3
マラリアの病状は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に感染した赤血球が微小血管に蓄積すること(sequestration)によって引き起こされる。この過程に関わるのが、この原虫に由来する多型の接着タンパク質PfEMP1(erythrocyte membrane protein 1)である。PfEMP1バリアントのうち、ヒト内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)に自身のCIDRα1ドメインを介して結合する亜集団が、重症マラリア発病の原因となる。血中に存在する多種多様なPfEMP1バリアントを、個々の抗体が認識できるかどうかは、長い間疑問となってきた。本論文で我々は、CIDRα1に対する幅広い反応性を持つヒトモノクローナル抑制抗体2種類を報告する。2人のヒトから単離したこれらの抗体は、多様なCIDRα1ドメイン(CIDRα1の6つのサブクラスのうちの5つ)に対し、類似する一貫したEPCR結合阻害を示した。どちらの抗体も、組換え完全長PfEMP1タンパク質および天然のPfEMP1タンパク質両方のEPCR結合を阻害し、同様に生物工学で作製した3Dヒト脳微小血管において、生理学的に適切な血流条件の下で原虫の血管への蓄積も阻害した。3種類の異なるCIDRα1抗原バリアントと複合体を形成したこの2種類の抗体の構造解析により、その結合機構は類似しており、CIDRα1中のEPCR結合部位にある高度に保存された3つのアミノ酸残基との相互作用に依存していることが明らかになった。このような幅広い反応性を持つ抗体は、重症マラリアに対する獲得免疫の共通機構を示している可能性が高く、ここから、重症マラリアを標的とするワクチンや治療法の設計に役立つ新たな手掛かりが得られる。

