生理学:心筋梗塞は睡眠を増強して心臓の炎症と損傷を制限する
Nature 635, 8037 doi: 10.1038/s41586-024-08100-w
睡眠は心血管の健康に不可欠である。しかし、心血管の病理と睡眠を結び付ける回路については、完全には解明されていない。心臓の損傷が睡眠に影響を及ぼすかどうか、また睡眠を介した神経出力が心臓の治癒や炎症に関与するかどうかも不明である。今回我々は、ヒトとマウスにおいて、心筋梗塞(MI)後に単球が脳へと活発に動員されて睡眠を増強し、これが心臓への交感神経の出力を抑制して、炎症を抑え、治癒を促すことを報告する。MI後、ミクログリアは脈絡膜叢を介して循環血中の単球を脳の視床後外側核(LPN)へ速やかに動員して、単球はそこで再プログラム化されて腫瘍壊死因子(TNF)を作る。視床LPNでは、単球由来のTNFがTnfrsf1aを発現するグルタミン酸作動性ニューロンと結合し、徐波睡眠圧と徐波睡眠量を増加させる。MI後に睡眠を妨げると心臓機能が悪化し、心拍変動が減少して、自発性の心室頻拍が引き起こされた。MI後に視床LPNのグルタミン酸作動性TNFシグナル伝達を操作して睡眠を妨げたり短縮したりすると、心臓の交感神経入力が増加し、それがマクロファージのβ2アドレナリン作動性受容体を介したシグナルとなって、単球の流入を増加させる走化性シグネチャーが促進された。急性冠不全症候群後の数週間に睡眠が不足すると、二次的な心血管事象が起こりやすくなり、心機能の回復を低下させた。また、ヒトでの睡眠不足は、β2作動性受容体を発現する単球を走化性表現型へと再プログラム化し、その遊走能を高めることが分かった。まとめると、我々のデータは心損傷後の睡眠の心原性調節を明らかにしており、これが心臓への交感神経の入力を抑制し、このため炎症と損傷が制限される。

