がん遺伝学:がん細胞における染色体外DNAの共同継承
Nature 635, 8037 doi: 10.1038/s41586-024-07861-8
遺伝の染色体説によると、同じ染色体上の遺伝子は一緒に分離するが、異なる染色体上の遺伝子は独立に分配される。染色体外DNA(ecDNA)はがんによく見られ、細胞分裂過程でのランダムな分離を介して、がん遺伝子の増幅、遺伝子発現の調節異常、腫瘍内不均一性を引き起こす。異なる塩基配列を持つecDNAはecDNA種と呼ばれ、がん細胞において共存しており、分子間協調を促進できる。腫瘍細胞内の多数のecDNA種が分配される仕組みや、体細胞の世代を超えて維持される仕組みは分かっていない。今回我々は、協調的なecDNA種が有糸分裂での共分離を介して、共同継承されることを示す。画像化と単一細胞解析から、ヒトがん細胞では異なるがん遺伝子をコードする多種類のecDNAが同時に生じていて、コピー数と相関していることが分かった。有糸分裂の際にecDNA種が非対称に共同で分離する結果として、娘細胞では選択の前に多数のecDNA種で同時にコピー数増加が見られた。有糸分裂の開始時の分子間の近接性と活発な転写により、ecDNA種の共同分離が促進され、また転写抑制により共分離が減少する。計算モデル化から、ecDNAの共分離と共選択の定量的原理が明らかになり、がん細胞で観察されたecDNA分布が予測された。ecDNAの共同継承は、エンハンサーエレメントのみを含んだ特殊なecDNAの共増幅を可能にする一方で、協調的なecDNAがん遺伝子を同時に枯渇させる治療戦略にもつながる。ecDNAが共同継承されることにより、がん遺伝子の協調と新しい遺伝子調節回路が安定化し、優位になるエピジェネティック状態の組み合わせが細胞世代を超えて伝達できるようになる。

