がん遺伝学:転写–複製衝突の増強はecDNA陽性がんを標的とする
Nature 635, 8037 doi: 10.1038/s41586-024-07802-5
染色体外DNA(ecDNA)は、がん患者にとって大きな難題である。ecDNAは、がん遺伝子の大規模な転写と急速なゲノム進化を促進することで腫瘍を治療抵抗性とし、これは患者の生存率低下の一因となる。現在、ecDNAに特化した治療法は存在しない。本論文で我々は、転写–複製衝突(T–RC)を強化することで、ecDNAを含むがんを標的として除去できることを示す。ecDNA転写の段階的な解析によって、広範なRNA転写とそれに関連した一本鎖DNAが見つかり、染色体座位での場合と比べると、T–RCと複製ストレスがずっと多く生じることが明らかになった。ecDNAでのヌクレオチドの取り込みは極めて遅く、がんのタイプやがん遺伝子の積み荷にかかわらず、ecDNAを含む腫瘍での複製ストレスは著しく高い。DNA損傷修復のメディエーターで一本鎖DNAに結合するpRPA2-S33は、DNA二本鎖切断の増加とS期チェックポイントキナーゼCHK1の活性化に伴って、転写依存的な様式でecDNAへの局在が増加した。CHK1を遺伝学的あるいは薬理学的に阻害すると、ecDNAを含む腫瘍で広範囲にわたって腫瘍細胞死が優先的に引き起こされた。我々は、選択性が高く強力で生物学的利用能の高いCHK1経口阻害剤であるBBI-2779を作出した。BBI-2779はecDNAを含む腫瘍細胞を選択的に殺傷する。ecDNA上で増幅されたFGFR2を含む胃がんモデルで、BBI-2779は腫瘍増殖を抑制し、汎FGFR阻害剤インフィグラチニブに対する抵抗性(ecDNAを介して獲得された)を妨害し、その結果としてマウスで強力かつ持続的な腫瘍退縮が起こった。T–RCは、ecDNA指向性治療の標的であり、過剰な合成致死性をがん治療に利用できることが明らかになった。

