ウイルス学:脳炎性アルボウイルスの沈静期における受容体の移行
Nature 632, 8025 doi: 10.1038/s41586-024-07740-2
西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)は、20世紀初頭にヒトやウマで脳炎の大規模なアウトブレイク(集団発生)を頻繁に引き起こした節足動物媒介性ウイルス(アルボウイルス)であるが、その後、アウトブレイクの頻度は著しく減少し、過去20年間に単離されたこのアルファウイルスの株は、1930年代や1940年代に単離された株よりも哺乳類における毒力が弱くなっている。WEEV株におけるこの表現型の変化と、それと時期を同じくした動物間での流行の低下(ウイルスの沈静化〔submergence〕として知られる)の基盤は分かっておらず、強毒株が再出現する可能性も不明である。今回我々は、プロトカドヘリン10(PCDH10)がWEEVの細胞受容体であることを突き止めた。1930年代や1940年代に単離された複数の強毒性のWEEV祖先株は、ヒトPCDH10への結合に加えて、別の脳炎アルファウイルスが受容体として認識する超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)およびアポリポタンパク質E受容体2(ApoER2)にも結合できることが分かった。しかし、我々が調べたWEEV株のほとんどがPCDH10に結合するのに対し、現在の株は哺乳類のPCDH10を認識する能力を失っている一方で鳥類のPCDH10に結合する能力は保持していることから、WEEVは風土病として流行中に主なリザーバー宿主に適応したことが示唆される。PCDH10は、マウスの初代皮質ニューロンへのWEEV E2–E1糖タンパク質を介した感染を支え、また、マウスに可溶型PCDH10を投与すると、致死的なWEEVチャレンジが防御された。我々の結果は、WEEV株の再出現に向けた医学的対策の開発とリスク評価に意味を持つ。

