構造生物学:NMDA受容体のリガンドゲーティングと開口の分子機構
Nature 632, 8023 doi: 10.1038/s41586-024-07742-0
グルタミン酸神経伝達とイオンチャネル型グルタミン酸受容体の活性化は、神経興奮性や神経可塑性を制御するための基本的な手段である。N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)は、活性化のためにグルタミン酸とグリシンの2つのリガンドを必要とする、リガンド依存性チャネルの中で他に例を見ないユニークなチャンネルである。NMDARはヘテロ四量体イオンチャネルであり、GluN1とGluN2サブユニットの細胞外リガンド結合ドメイン(LBD)にグリシンとグルタミン酸が同時に結合することによってチャネルが開口する。しかし2つのリガンドによるチャネル開閉の分子機構は、開口したチャネルとアポ状態の構造が不明であったため、正確には理解されていなかった。今回我々は、チャネルのゲート開口において、LBDと膜貫通ドメイン(TMD)をつなぐリンカーの張力と細胞外ドメインのTMDに対する回転が必要であることを示した。クライオ電子顕微鏡法を用いて、アロステリック化合物と結合した開口状態のGluN1–GluN2B(GluN1–2B)NMDARの構造を解明した。この過程で、GluN1とGluN2B中の孔形成ヘリックスが回転して曲がり、準4回対称から2回対称へとTMDチャネルの対称性が変化した。アポ状態と単一リガンド結合状態のGluN1–2B NMDARの構造から、グリシンまたはグルタミン酸のどちらかだけの結合ではGluN1–2B二量体の配置がそれぞれ異なり、チャネル開口に必要なLBD–TMDリンカーの張力が不十分であることが判明した。この構造的枠組みの解明により、NMDARチャネル開閉の重要な決定因子とNMDAR活性を調節する薬理学的戦略を特定することが可能となる。

