神経科学:神経伝達物質の動的隔離による日長への適応
Nature 632, 8023 doi: 10.1038/s41586-024-07692-7
昼光量(日長)の変化は、生理機能や行動に変化をもたらす。季節ごとの日長への適応反応は、全ての生物にとって重要であり、その調節不全は情動障害やメタボリックシンドロームなどの疾患につながる。こうした反応には概日リズム回路が関与していると考えられているが、日長の変化に行動の相を同調させるための正確な細胞基盤はよく分かっていない。今回我々は、ある脳回路と、神経軸索分枝に特異的で可逆的な神経伝達物質の配置システムが、行動および睡眠の日長変化への適応に極めて重要であることを見いだした。マウス脳幹の正中縫線核にあるmrEn1-Pet1と呼ばれるニューロンタイプでは、セロトニンをVGLUT3(別名SLC17A8:グルタミン酸の代理指標)から隔離し、概日リズムや睡眠覚醒タイミングの決定に関与する特異的な脳領域を神経支配する別の軸索分枝に配置する。この軸索分枝特異的な神経伝達物質配置は、昼相と夜相を識別しなかったが、日長の変化に伴って再編成された。昼夜平分条件から離れた時に、細胞体ではなく軸索終末が神経化学的な表現型が変化し、そしてこの変化は、昼夜平分条件に戻すと元に戻った。mrEn1-Pet1ニューロンでVglut3を遺伝的に無効化すると、睡眠覚醒時間、自発活動、時計遺伝子の発現が、新しい日長に同調しなくなったり、応答が遅れたりした。我々は、狂犬病ウイルスによる交差追跡と投射特異的なニューロン抑制を併用して、視索前野からmrEn1/Pet1への結合が日長入力の復号化、神経伝達物質の再編成の駆動、行動の同期化の促進の役割を担っていることを詳細に示した。今回の結果から、ある脳回路と周期的な軸索分枝特異的な神経伝達物質配置が生物の日長変化への適応を調節していることが明らかになった。

