微生物学:腸球菌ファージ由来の酵素が移植片対宿主病を抑制する
Nature 632, 8023 doi: 10.1038/s41586-024-07667-8
腸マイクロバイオームの変化は、同種造血幹細胞移植(allo-HCT)後の急性移植片対宿主病(aGVHD)の発症に極めて重要な役割を果たしている。しかし、腸のディスバイオーシスを安全に解消する効果的な方法はまだ確立されていない。ディスバイオーシスに関連する腸内病原菌であるEnterococcus faecalisの増殖は、aGVHDのリスク因子であることが明らかにされている。本研究では、allo-HCTを受けた患者の腸マイクロバイオームを解析し、E. faecalisは薬剤耐性遺伝子の獲得によってではなく、腸内でのバイオフィルム形成によって除去を免れ、増殖することを見いだした。我々は、糞便試料から細胞溶解毒素陽性の高病原性E. faecalisを単離し、細菌の全ゲノム塩基配列解読データを解析することで、E. faecalis特異的バクテリオファージ由来の抗E. faecalis酵素を特定した。この抗菌酵素は、in vitroおよびin vivoでE. faecalisのバイオフィルムに対する溶解活性を示した。さらに、E. faecalis、あるいはEnterococcus属細菌が優勢な特徴を示した患者の糞便試料を定着させたノトバイオートマウスにaGVHDを誘導すると、E. faecalis特異的酵素を投与した群では、対照群と比較して腸内の細胞溶解毒素陽性E. faecalisのレベルが低下しており、生存率が大幅に上昇した。従って、既存の抗生物質では除去することが難しいバイオフィルム形成性の病原性E. faecalisに特異的なファージ由来抗菌酵素の投与は、aGVHDに対する防御策となる可能性がある。

