超伝導:カイラル分子–TaS2ハイブリッド超格子における非従来型超伝導
Nature 632, 8023 doi: 10.1038/s41586-024-07625-4
カイラル超伝導体は、運動量空間において時計回りまたは反時計回りに回る複素超伝導秩序パラメータを有する他に類を見ない種類の非従来型超伝導体で、固有の時間反転対称性の破れ(TRSB)を伴うトポロジカルに非自明な系の代表であり、トポロジカル量子コンピューティングにとって直接的な意義を有する。固有のカイラル超伝導体は極めてまれであり、UTe2、UPt3、Sr2RuO4を含め、議論の余地のあるいくつかの例があるだけである。非中心対称性超伝導体にカイラル超伝導が存在する可能性が示唆されているが、ただしこのような非中心対称性は、典型的な固体超伝導体では一般的ではない。代わりに、鏡映対称性でも反転対称性でもないカイラル分子が広範囲に調べられている。我々は、従来型超伝導体格子にカイラル分子を組み込むことによって、非中心対称性を導入してカイラル超伝導を実現できる可能性を示唆している。今回我々は、カイラル分子をインターカレートさせたTaS2ハイブリッド超格子における非従来型超伝導を調べている。今回の研究では、パウリ常磁性限界をはるかに超える並外れて大きい面内上部臨界磁場Bc2,||、Little–Parks測定におけるロバストなπ位相シフト、そしてゼロ磁場下の超伝導ダイオード効果(SDE)が明らかになった。こうした非従来型超伝導の実験的特徴からは、結晶原子層と自己組織化カイラル分子層との間の興味深い相互関連が、エキゾチックなトポロジカル物質につながる可能性が示唆される。今回の研究は、ハイブリッド超格子が、豊富な物理的特性を示す膨大なライブラリーの層状結晶と、設計可能な構造モチーフや官能基を有する分子のほぼ無限のバリエーションとの組み合わせによって、人工量子材料への多様な道をつける可能性があることを浮き彫りにしている。

