分子生物学:ヒトの塩基配列特異的転写因子の機能は位置に依存している
Nature 631, 8022 doi: 10.1038/s41586-024-07662-z
転写活性のパターンは、プロモーターやエンハンサーのような調節エレメントを介して我々のゲノムにコードされている。矛盾するようだが、これらの調節エレメントに含まれている塩基配列特異的な転写因子(TF)の結合部位はよく似た取り合わせになっている。これらの塩基配列モチーフが多数の(重複する場合も多い)遺伝子発現プログラムをコードする仕組みを知ることは、遺伝子の調節やノンコーディングDNAに起こった変異がどのようにして疾患に結び付くのかを理解するために重要である。今回我々は、天然の遺伝的変異、内在性TFタンパク質レベルの摂動、天然の調節エレメントと合成調節エレメントの大規模な並行解析を用いて、個々の転写開始部位(TSS)の視点から遺伝子調節を研究することにより、TFの結合が転写開始に与える影響が、位置に依存することを明らかにした。TF結合部位がTSSに対してどのような位置にあるかについて解析を行い、非常に優先されやすい位置にあるいくつかのモチーフが明らかになった。これらのパターンは、個々のTF特有の機能特性の組み合わせであることが分かった。すなわち、カノニカルな活性化因子であるNRF1、NFY、Sp1を含めた多くのTFが、TSSに対する正確な位置に応じて、転写開始を活性化したり抑制したりする。従って、複数のTFとそれらの間隔が、集団として転写開始の位置と頻度を制御している。さらに広くいうと、これらの知見によって、TF結合部位の同じような取り合わせが、TF結合部位の空間配置に応じた異なった遺伝子調節をもたらすことを可能にする仕組みが明らかになり、また、DNA塩基配列の多型が転写の変化や疾患にどのように寄与しているかが判明し、ヒトゲノムの調節情報を読み解く際にTSSデータが極めて重要な役割を持つことが明確になった。

