感染症:肝臓の免疫可変抵抗器は慢性HBV感染においてCD8 T細胞免疫を調節する
Nature 631, 8022 doi: 10.1038/s41586-024-07630-7
世界中で3億人がB型肝炎ウイルス(HBV)に慢性感染しており、これらの感染者ではウイルス特異的なCD8 T細胞の機能が失われ、HBVに感染した肝細胞を除去できないが、ウイルス特異的CD8 T細胞の機能が失われる機構はいまだよく分かっていない。今回我々は、肝臓の免疫可変抵抗器が、ウイルス特異的CD8 T細胞の活性化を起こりにくくさせ、エフェクター機能の喪失につながることを実証する。HBVなどの肝臓指向性ウイルスによる持続感染の前臨床モデルでは、機能不全のウイルス特異的CXCR6+ CD8 T細胞が肝臓に蓄積し、顕著な特徴として、T細胞疲弊とは異なり、CREM(cAMP-responsive element modulator)の転写活性が増強していることが分かった。慢性B型肝炎患者では、循環血中および肝臓内においてCREMの発現と転写活性が増強したHBV特異的CXCR6+ CD8 T細胞が、HBV特異的CD8 T細胞の12~22%の頻度で検出された。しかし、T細胞で抑制性CREM/ICERアイソフォームをノックアウトしても、T細胞免疫を救済することはできなかった。これは、CREM活性がT細胞機能喪失の原因ではなく結果であることを示しており、また、CREM上流のプロテインキナーゼA(PKA)のリン酸化亢進という観察によってさらに裏付けられた。実際、肝臓への持続感染では、T細胞のアデニル酸シクラーゼ活性の増大によるcAMP–PKAシグナル伝達の亢進によって、CREM活性が増強され、T細胞の活性化とエフェクター機能が抑制されることが分かった。機構的には、肝細胞上の抗原を認識するCD8 T細胞が肝類洞内皮細胞と密接かつ広範囲な接触を確立し、これによってT細胞におけるアデニル酸シクラーゼ–cAMP–PKAシグナル伝達が高められる。これらの肝臓CD8 T細胞では、肝細胞上の抗原認識は起こるが、T細胞受容体シグナル伝達経路の重要なシグナル伝達キナーゼのリン酸化が行われず、このためT細胞の活性化ができなくなっていた。従って、肝類洞内皮細胞との密接な接触により、免疫可変抵抗器のような方法でアデニル酸シクラーゼ–cAMP–PKA軸を介して、ウイルス抗原を発現する肝細胞を標的とするHBV特異的CD8 T細胞の活性化とエフェクター機能が抑制される。

