Article
神経発生:脳キメロイドは神経毒性誘発因子に対する個人の感受性を明らかにする
Nature 631, 8019 doi: 10.1038/s41586-024-07578-8
個人間の遺伝的なばらつきは、さまざまな疾患に対する感受性や疾患の進行に影響を及ぼす。しかし、正常な発生と疾患表現型における個人間の脳の違いを調べる試みは、信頼性のあるヒト細胞モデルが不足していること、そして現在の系を拡張して複数の人を代表できるようにするのが困難であることにより制限されている。本論文で我々は、複数のドナーに由来する細胞群を単一オルガノイドで共発生させることにより作製した、再現性の高い複数ドナーヒト脳皮質オルガノイドモデルである、ヒト脳キメロイド(Chimeroid)を報告する。我々は、複数の単一ドナーオルガノイド由来細胞を神経幹細胞あるいは神経前駆細胞の段階で再凝集させることで、顕著な増殖バイアスを持つ多能性幹細胞株を用いた場合でも各ドナーが大脳皮質の全ての細胞系譜を生み出すキメロイドを作製した。我々はキメロイドを用いて、臨床表現型のばらつきが大きい神経毒性誘発因子(エタノール、および抗てんかん薬のバルプロ酸)に対する感受性の個人差を調べた。個々のドナーは、標的細胞タイプに対する影響の浸透度と、影響を受けた各細胞タイプ内の分子表現型の両方においてばらつきを示した。我々の結果は、ヒトの遺伝的背景が神経毒性感受性の重要なメディエーターである可能性を示唆しており、キメロイドを、脳の発達と疾患の過程における個人差をハイスループットで調べるためのスケーラブルな系として提示するものである。

