幹細胞:MYCT1はヒト造血幹細胞における環境感知を制御する
Nature 630, 8016 doi: 10.1038/s41586-024-07478-x
ヒトの造血幹細胞(HSC)の自己複製や生着を支配する過程はほとんど理解されておらず、培養で機能的なHSCの確実な増殖を再現することは困難である。今回我々は、MYCT1(MYC target 1、別名MTLC)が、HSCでエンドサイトーシスと環境感知を調整する、極めて重要なヒトHSC調節因子であることを明らかにする。MYCT1は、未分化のヒト造血幹・前駆細胞(HSPC)と内皮細胞に選択的に発現しているが、HSC培養中に顕著に発現低下が起こるようになる。レンチウイルスによりMYCT1をノックダウンすると、ヒトの胎児肝臓および臍帯血(CB)のHSPCの増殖と生着が妨げられた。対照的に、MYCT1の発現を回復させると、培養CB HSPCの増殖と生着が改善された。MYCT1がノックダウンされた、あるいは過剰発現したヒトCB HSPCの単一細胞RNA塩基配列解読によって、MYCT1が、ETS因子の発現やミトコンドリア活性の低下など、HSCの幹細胞性に不可欠な重要な調節プログラムや細胞特性を支配していることが明らかになった。MYCT1はHSPCのエンドソーム膜に局在しており、小胞輸送調節因子およびシグナル伝達装置と相互作用する。HSPCにおけるMYCT1の喪失は、過剰なエンドサイトーシスとシグナル伝達応答の過剰活性化につながったが、MYCT1発現を回復させると、培養誘導性エンドサイトーシスと調節不全のシグナル伝達のバランスが取られた。さらに、エンドサイトーシスの最低速度に基づいて培養CB HSPCをソーティングすると、MYCT1発現とMYCT1調節性のHSC幹細胞性プログラムが維持されたHSPCが特定された。我々の研究は、MYCT1調節性エンドサイトーシスと環境感知が、ヒトHSCの幹細胞性の維持に必要な極めて重要な調節機構であることを明らかにしている。我々のデータはまた、MYCT1のサイレンシングが、ヒトHSCの増殖を低下させる細胞培養誘導性の脆弱性であることを示している。

