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生物物理学:中身が充填されたバクテリオファージ粒子の構造と物理的特性
Nature 627, 8005 doi: 10.1038/s41586-024-07150-4
タンパク質製のキャプシド内に封じ込められた1本のヌクレオチド鎖には、機能を持ったウイルス粒子、すなわちビリオンを作るために必要な指示が全て含まれている。多くのウイルス種でタンパク質キャプシドの構造は解明されているが、ウイルスゲノムの三次元構造は実験による解明がほとんどなされていない。今回我々は、多重解像度シミュレーションによってHK97ウイルスのビリオンの全原子構造モデルを、3万9732塩基対の全ゲノムを含めて明らかにした。キャプシドの中身の充填を行うモーターの働きを模倣して、ゲノムをキャプシド内へ少しずつ入れてゆき、次にこの充填済みのキャプシドの構造を、分解能を上げながらシミュレーションを繰り返して精密化して、キャプシド内に封じられた水やイオンも含めて2600万個の原子からなる完全なビリオンのモデルを構築した。DNAの充填はループ突出機構によって起こるので、充填されたゲノムは全般的にさまざまな立体配置を取っており、それぞれのウイルス粒子に個別の特性をもたらす。複数回のマイクロ秒にわたる全原子シミュレーションによって、充填されたゲノムがキャプシドの構造、内圧、水やイオン、DNAの静電的性質や拡散に与える影響の特徴が示され、また、キャプシドがゲノムに与える構造的影響が明らかになった。今回用いた方法は、他のウイルス種の完全な全原子構造モデルの作製に一般化可能であり、ゲノムとキャプシドの接点で働く新たな薬剤標的の発見に役立つ可能性がある。

